八戸市の「市民の鳥」にも指定されているうみねこ。うみねこ達が2月頃から8月頃まで過ごすのが、八戸の海の景色を代表するシンボル「蕪島」です。
蕪島は2022年3月8日、1922(大正11)年に国の天然記念物に指定されてから100周年を迎えました。日本最大のうみねこの繁殖地で、しかも、間近まで近づいてその様子を観察することができる珍しい場所。島や周辺には3〜4万羽のうみねこ達が飛び交い、巣を作り、生活しています。
島の頂上に鎮座する「蕪嶋神社」は、江戸時代に八戸藩を治めた八戸南部家のお殿様の家紋「向鶴(むかいづる)」を使うことを許されている、由緒ある神社。今でも社殿の至る所に向鶴の紋章を見ることができます。島の麓の蕪島海浜公園は八戸の海水浴のスポット。近くには食堂と土産店を備えた観光施設「かぶーにゃ」や、うみねこの営みを学ぶことができる「蕪島休憩所」があります。さらに蕪島は、八戸から福島県相馬市まで続く全長約1025キロの自然歩道「みちのく潮風トレイル」の北の玄関口でもあります。
青森県を代表する民謡の一つ「八戸小唄」は「唄に夜明けたかもめの港 舩は出てゆく南へ北へ 鮫の岬は潮けむり」で始まります。まさにこの「かもめ」はうみねこ、「鮫の岬」は蕪島のある鮫地域のこと。
4月は「蕪島まつり」、7月は「さめ浜まつり」、12月31日〜1月1日にはカウントダウン花火を打ち上げる「干支花火昇運祈願祭」等が行わる、八戸市の文化の拠点でもあります。
人間とうみねこの営みが交差する蕪島。うみねこたちは、春から夏にかけて、子育ての様子を間近で見せてくれます。
2月、越冬のために西日本で過ごしていたうみねこ達が、八戸の海に帰ってきます。そして3月〜4月になると、交尾をして、島周辺に巣を作って、4月下旬〜5月上旬には産卵の時期を迎えます。うみねこの夫婦は長年添い遂げるほど仲が良いようで、時折甘えるような声で鳴く姿を見ることもできます。
5月になると、卵からヒナ達が生まれ、そこかしこから「ぴーぴー」というか細く可愛らしい鳴き声が聞こえてきます。
ひとつの家族をずっと観察していると、ヒナ達は親鳥の羽に隠れてお昼寝をしたり、目が覚めると親鳥の口元をじっ見つめてエサをねだったり、巣の周辺をちょこちょこと歩いたりと可愛い表情を見せてくれます。
6月、7月にもなれば、ヒナ達はだんだんと大人と同じくらいの大きさになり、羽を羽ばたかせて飛ぼうとする姿も。7月下旬、8月上旬には島を離れ、北海道やサハリンへと向かいます。
このようにして2月〜8月上旬、蕪島ではうみねこ達がその営みの様子を余すところなく見せてくれます。
うみねこを観察するときは、距離を保って、触ったり脅かしたりといったイタズラは御法度です。エサをやるのもダメ。時折降ってくる「フン」にもご注意!
あ、でも、このフン、「運がつく」という縁起物でもあるようなので、降ってきたフンに自ら当たりにいく人もいるとかいないとか。
参考
▷八戸ふるさと検定テキストブック
▷蕪島休憩所の展示物
▷八戸藩南部家16代当主南部光隆さんのお話