ピアニストの泉沢果那さん、南郷ジャズで完全復帰へ 「ガチタンバリン」の大石竜輔さんと吉祥寺でデュオライブ

5月30日、JR吉祥寺駅近くのライブハウス「Strings」で行われた泉沢果那さんと大石竜輔さんのライブに行ってきました。

ニューオリンズピアノと歌の泉沢さんと、タンバリン奏者の大石さんによる、なかなか珍しい組み合わせのライブ。元気いっぱいな演奏と楽しいトークをたくさん聞かせていただき、あっという間の時間を過ごし、「やっぱり人生には音楽が必要だなぁ」なんて思いながら八戸に戻りました。

お二人は、4人組の音楽グループ「泉沢果那ニューオリンズピアノカルテット」のメンバーとして共に活動しています。このカルテットは青森県とも縁があり、2018年に初めて八戸の音楽フェス「南郷サマージャズフェスティバル」(南郷ジャズ)に出演。そして今年、32回目の開催となる南郷ジャズに、2度目の出演を果たします。

この日Stringsで開かれたライブは、南郷ジャズでの「前哨戦」とも言えるもの。泉沢さんと大石さんがデュオでライブを開いたのはこれが初めてで、南郷ジャズに向けて気持ちを高めていく意味でも大切なライブだったようです。

2018年の南郷ジャズ出演・・・そして引退

前回2018年の南郷ジャズでの泉沢さんのステージは、ジャズとは全く違うニューオリンズピアノの世界観と主催者もびっくりの型破りな展開で、とても盛り上がりました。写真撮影とSNS投稿がOKになったり、メンバーが集合写真を撮り始めたり、泉沢さんが演奏中にステージを走って叫び始めたりと、予想外の場面も多く、心奪われた人も多かったと思います。

2018年の南郷サマージャズフェスティバル

しかし、泉沢さんは2022年夏、「音楽」を表舞台で披露し続ける活動から身を引くことを発表しました。持病と向き合うことを優先し、音楽活動から離れることを決意。12月、地元・名古屋で行われたライブをもってライブ活動から引退しました。私はこの年、「Strings」で開かれたソロライブに行き、泉沢さんが奏でるピアノの音色に触れました。その音色は、南郷ジャズとは異なった、穏やかで、少し寂しさの残るものでした。

2022年11月23日、Stringsで行われたソロのラストライブ

ライブの最中、泉沢さんが届ける音や、表情、そして言葉から、「命」と言う言葉が脳裏に浮かびました。

泉沢さんはきっと、なにか命に関わるほどの物事と向き合い、覚悟を決めたに違いない。何がご自身の人生にとって最良なのかを、考え続けたに違いない。そして、導き出したのは「生き続けるために必要な覚悟」なのだ感じ、少し安堵したのでした。どんな選択をしても、生き続ける限り、繋がっていくものがあるからです。

自身の命と向き合い続けるために、大切なものを手放す…。

音楽家にとって「音楽」とは、生命線そのものと言い換えることができるでしょう。それを失った時、音楽家はどう生きていくのでしょうか。その不安は、計り知れないものがあります。

引退から一年後の決意、そして再び南郷へ

引退から1年後の2024年1月1日、泉沢さんは自身のブログで「今年の夏、大きな舞台で完全復帰をさせていただくこととなりました」と発表。体調が回復し、復帰を決意。「大きな舞台」とは南郷ジャズのこと。「南郷ジャズに出演できるならば」と復帰を決めたと言います。

今回5月30日にStringsで行われたライブで泉沢さんは、バッサバッサと髪を揺らしながらピアノを奏で、ニューオリンズ訛りだという歌声を響かせ、大石さんの奏でる「ガチ」なリズムにガッツリと食いついて離さず、最後まで全速力で駆け抜けました。その様子を客席で観ていた私は、ただただ楽しい時間を過ごし、2022年末に泉沢さんが見せた姿とはまた違った「命」を感じとりました。その「命」に、苦しみの中から見出した喜びや、汗の匂いを感じるようでした。

ライブ後に撮影させていただいた一枚

しかし泉沢さんはご自身が奏でる音楽について「まだ100%ではない」「以前のような演奏はできていない」と話します。

人の人生に「100%完璧」などないとは思います。逆に不完全だから、美しく、楽しく、苦しいとも言えるでしょう。そういう中でも、限りなく完璧に向かい続ける姿を見せる人のことを、プロと呼ぶのでしょう。

音楽家が表舞台から身を引く覚悟を決めた時、どんなことを思うのでしょうか。

泉沢さんは今年、「引退」を選んだ経験を経て、再び南郷ジャズのステージに戻って来ます。そして、今年の南郷ジャズを一つの大切な通過点とし、新しい日々へと歩んで行かれるのだと思います。

吉祥寺で見た泉沢さんの姿は、命を削るようでもあり、命を輝かせるようでもありました。

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泉沢果那
大石竜輔

1件のコメント

  1. 原 健志

    こんにちわ
    素晴らしいレポートありがとうございます
    命、生き方、楽しみ方、ひしひしと伝わってきます
    私は地元名古屋(岡崎)で果那さんの音楽を聴いてきました
    専門的なことはわかりませんが、ただただ楽しい
    そして人柄も素晴らしい、こんな音楽が世界に広まりみんなに
    知ってもらえることを願います
    有名になりすぎると距離ができてしまう寂しさもありますが
    この人よく知ってると自慢します
    復活の南郷ジャズ、ぜひ立ち会わなければ…

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