八戸地方を代表する伝統芸能の祭り「八戸えんぶり」が、2月17日から20日まで八戸市中心街をメインエリアに開催されます。
えんぶりは、青森県八戸市や三戸郡から町内単位で組織した33組の「えんぶり組」が参加する伝統芸能のお祭り。烏帽子を被った太夫(たゆう)たちの田植えをイメージした踊りと、大黒様や恵比寿様に扮した可愛らしい子供たちの祝福芸、笛・太鼓・手平鉦によるノリの良いお囃子が、八戸市内の至る所で披露されます。
2020年の開催を最後に、2021年、2022年の2年間は中止を余儀なくされました。どこの地域においても「祭り」とは「人と人とが集うこと」が伝承活動の要となります。しかし同時に「密」になってしまいます。
八戸えんぶりは、25〜30万人の入り込みがある青森県最大規模の冬のお祭り。また、八戸市においては地域の象徴の一つでもあります。このまま祭りを開催しないまま時が過ぎると、地域文化の存続や地域経済の維持にも暗い影を落としてしまう可能性があります。
祭りを主催する八戸地方えんぶり保存振興会では、コロナ禍の逆境の中にあってもいかにえんぶりを伝承し、祭りを開催するかを検討し続けていたようです。
結果として、2021年は八戸市中心街の「マチニワ」でトークイベントやお囃子披露企画、2022年は5月に代替イベント「八戸えんぶり in はちのへホコテン」を開きました。
そしてようやく迎えた2023年、コロナ禍が3年目に入る中、感染対策をとった上で「例年と同程度の規模」の祭りを開催する運びとなりました。
では、具体的に例年とは何が違うのか?わかりやすくまとめていきます。
恒例の「ふだ取り」は行わない
八戸えんぶりは長者山新羅神社の行事。例年祭り前日の2月16日には既に多くのえんぶり組が境内に入り、火を囲んで酒を飲んだり、お囃子を演奏しあって盛り上がったりします。
一番最初に神社を訪れたえんぶり組には、祭り初日2月17日の朝に「一番札」が与えられます。「一番札」を得たえんぶり組は、「一斉摺り」で先頭のさくら野百貨店前でえんぶりを披露することができます。
今年はこの「ふだ取り」を行いません。えんぶり組が奉納のために神社に入るのは祭り当日の午前5時から7時まで。「一斉摺り」の出演順は、2020年の祭りと同じ並び順となります。
一斉摺りのエリアを拡大
八戸えんぶり初日のメインイベント「一斉摺り」は、全てのえんぶり組が八戸市中心街で一斉に舞を披露します。例年は、表通りの十三日町と三日町、裏通りの六日町、それに表通りと裏通をつなぐヤグラ横丁で行います。
今年は感染対策の観点から、六日町の隣の十六日町に範囲を広げ、えんぶり組同士のスペースを十分に保って行います。また、一斉摺りの前に行われる「えんぶり行列」は運行ルートを短縮します。
新企画「空間演出企画」を実施
明治時代に建てられた趣のある建物「更上閣」(こうじょうかく)で行われる有料公演「お庭えんぶり」。あたたかい建物の中から、かがり火の焚かれた日本庭園で繰り広げられるえんぶりを鑑賞できる人気企画です。
今年は期間中の2月18日のみ、新たな企画として「空間演出企画」を実施。
これは、青森県とオマツリジャパンの企画で、昨年の「青森ねぶた祭」に続き2例目。
明治時代をテーマにした演劇の要素を加え、えんぶりと演劇によって、えんぶりが盛り上がり始めた明治時代の空気が感じられる公演になるようです。
チケットは2月1日に発売されましたが、即日完売・・・・。2月18日以外の通常公演は購入可能かもしれませんので、調べてみると良いと思います。
例年と同じだと思って良さそう
以上のように、「一斉摺り」や「ふだ取り」は感染対策のために一部内容を変えます。新要素として「空間演出企画」が加わります。これ以外は例年とほぼ同じ内容で行われるようです。
えんぶりの成功が、三社大祭に繋がる
3年ぶりに開催される八戸えんぶり。八戸では夏に「八戸三社大祭」が行われます。八戸三社大祭は140万人もの入り込みを誇る、八戸の観光の要の一つでもあります。八戸三社大祭は3年連続で規模を縮小しています。
感染対策をとりながら「例年と同じ規模」のお祭りを開催するのは簡単なことでは無いと思いますが、まずは今年の八戸えんぶりが成功することが、八戸三社大祭へと繋がっていくのではないでしょうか。
明治時代から豊作を願う神事として行われてきた「八戸えんぶり」。明治以前も含めれば「800年続く」とも伝わります。八戸では「えんぶりが春を呼ぶ」と言われています。
コロナ禍によって3年に渡って冷え込んだ状態が続いていた地域経済や文化の伝承が今年の八戸えんぶりをきっかけとして息を吹き返し、例年と同規模の「八戸三社大祭」へと繋がることを願いたいと思います。